特別天然記念物・田島ヶ原サクラソウ自生地(07年4月)

天然記念物桜草自生地
穏やかに晴れた桜満開の3月31日、1日そして5日と続けて田島ヶ原桜草公園に行ってみました。
国の特別天然記念物に指定されているサクラソウの自生地ですが、ノウルシ(野漆)の自生地ではないかとさえ思われるほど緑の草原に黄色の花が目立っていました。
 総苞葉が黄色に変わり、その上に多くの小さな杯状花序がつきその中から不定数の雄しべ、いぼいぼのある雌しべが延び出しています。そして杯の縁には蜜を分泌する腺体がついています。

若草色の高く盛り上がっている部分はノウルシの群生している所で、ピンクがサクラソウが自生している部分です。背景の染井吉野はこの日がちょうど満開でした。
この自生地は多くの人たちによって守り育てられています。是非浦和の宝 さくら草をご覧下さい。

「田島ヶ原サクラソウ自生地」は大正9年7月にまず天然記念物「土合村桜草自生地」として指定され、昭和27年3月文化財保護委員会より特別天然記念物「土合村サクラソウ自生地」として指定されました。その後土合村と浦和市の合併に伴い現在の田島ヶ原の名称に変更され、桜草、野漆、甘菜、蛙の傘、坪菫等湿生植物の自生地として保護されています。

自生地の碑 桜草群落
左上の写真は碑の所から奥に向って自生地を望んでいますが、ノウルシの勢力が強い様子が明らかです。右上のように桜草の個体群が見られる所も勿論あります。サクラソウ自生地では野漆が敵役みたいですが、両方とも環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧U類に指定されています。
桜草は、野生の花でも下の写真のように形や色そして真ん中の白い目に様々な変化があるのが特徴です。
サクラソウ サクラソウ サクラソウ
サクラソウ サクラソウ サクラソウ
サクラソウ サクラソウ サクラソウ

桜草は茎を地中あるいは地表で水平に伸ばしてその先に新しい株をつくる形で繁殖をします。空間を株で埋めながら外側に同心円状に広がっていきます。遺伝的には同一でありながら見た目には独立した多数の株の集まりのように見えます。そしてそれぞれの花群には形や色に大きな違いがあるので、クローン群は容易に特定できるようです。

桜草のクローン寿命はかなり長いようですが、個体群の長期的な維持や遺伝的な変異性の確保の為にはやはり花が咲き、実を結んで種子が生産される事が必要です。そのための仕組みとして桜草は雌しべが長く雄しべが短い長花柱花と逆の短花柱花の2種類の花があります。花の中央部の白く縁取られた花筒口をよく見ると柱頭が見えるピンの目と葯が覗いて見えるスラムの目があり、そこで区別できます。花筒口から雌しべが飛び出している花もありましたが、花弁に傷があるのはポリネーターのトラマルハナバチがとまった痕でしょうか。
異柱花の花粉でなければ結実しない異型花柱性はダーウィンの研究で有名で、アカネ科やタデ科にもある繁殖の仕組みです。これは自家受粉を避ける賢明な方法のようです。

ジロボウエンゴサク アマナ ツボスミレ
ジロボウエンゴサク
(次郎坊延胡索)
  07/4/1撮影
ケシ科の多年草。昔伊勢地方でこの花を次郎坊、菫を太郎坊と呼び、後ろに伸びた距を引っ掛けて遊んだという
アマナ(甘菜)  07/4/2撮影
ユリ科の多年草。太陽が出ないと花開かないので、曇っていた1日には撮影できず。別名ムギクワイ
ツボスミレ(坪菫)  07/4/1撮影
スミレ科の湿った草地に生える多年草。花は有茎種のスミレでは最も小さく横に広い。別名ニョイスミレ
アメリカスミレサイシン シロバナタンポポ ヒキノカサ
アメリカスミレサイシン
(亜米利加菫細心)
  07/4/1撮影
スミレ科の多年草。明治以降に園芸植物として導入され、逸出した北アメリカ東部原産の帰化植物
シロバナタンポポ(白花蒲公英)  07/4/1撮影
キク科の多年草。タンポポ属で花の白いのはこの種のみ。葉の緑色もうすい。九州に多いという
ヒキノカサ(蛙の傘)  07/4/5撮影
キンポウゲ科の多年草。湿地の蛙のいそうなところに咲く。5弁の黄色い小さな花をヒキ(カエル)の傘に見立てた
※このページ作成には「サクラソウの目」鷲谷いづみ著 知人書館発行 を参考にさせて頂きました
 
平成19年4月7日作成