ノビルもカラスビシャクも昔から人里の植物です

桜区道場4丁目の農道脇の同じ斜面に6月の初めにはノビルが花を咲かせ、1ヶ月後の7月にはカラスビシャクが独特の姿を見せていました。
両種とも史前帰化植物とも言われ、農耕と共に中国から帰化してきた植物と言われます。そして繁殖力の強さ、ムカゴをつける事、丸い地下茎を持つこと等多くの共通点があります。

ノビルの蕾は灰白色の苞に包まれて揺れています

荒川土手の野蒜の蕾

5月初めの荒川土手には小さな葱坊主が風に揺れていました。白い包葉に包まれたノビル(野蒜)の蕾ですが、包葉が灰白色で枯れたような印象を受け蕾というより花後という感じがしてしまいます。でも、この時期の野蒜は葉も鱗茎も美味しく食べられ荒川土手には野蒜堀の人が見られます。私も小さい頃に採りにいき確か酢味噌で食べたような記憶があります。

こんなに多く花を咲かせたのを見たのはラッキーです

野蒜花序 野蒜花
花柄は長さ約1.5p。外花被片3、内花被片3、雄しべ6、雌しべ1で雄しべの花糸は下の方が広く基部は一つに着いています。内花被片は花弁で右の写真で先端がピンク色をしています。外花被片は一つおきの白い片辺で萼に相当します。ムカゴ(珠芽)もたくさんついています。 07年6月7日 桜区道場4丁目にて
多くの蕾 珠芽が発根
左はたくさんの蕾がついていますがこれから花開くのでしょう。右は花は咲かずに、珠芽だけだったのでしょうか地に落ちる前にずいぶん発根しているようです。 06年5月15日と31日 いずれも荒川土手にて
野蒜は花を咲かせずムカゴだけをつける事の方が多いようで、小さな葱坊主の後はきれいな薄紫の花より、こげ茶の小さな塊を集めた愛想のない姿を見る方が多く、今回の農道脇のようにきれいな花を多く見る事は珍しく、幸せな気持になりました。

たくさんの野生のカラスビシャクには初見参です

カラスビシャクの仏炎包



7月12日にもう野蒜は何もないだろうと思いながらも見ていくと、雑草の緑の中に何やら怪しげな形のものを見つけました。カラスビシャク(烏柄杓)です。今まで植物園等では見ていましたが、ここにも、あそこにもと野生のものを見るのは初めてでした。一番普通にあるのに目に入らなかったのは、花をつけない地味な草なのでついつい見落としていたのでしょうか。

葉は烏柄杓とは赤の他人のように生えています

烏柄杓は上に伸びる付属体を全部入れようとすると下の方が入らず被写体としては難しい植物です。その上、茎葉はなく球茎から直接長い葉柄を出した3小葉の葉が、烏柄杓とはまったく縁もゆかりもないかのように生えています。今回2日続けて挑戦しましたが、付属体も葉も入れた写真は上手く撮れず仕舞いで、我ながら腕の未熟さにはあきれました。
3小葉の葉 長い葉柄
カラスビシャクの葉は仏炎包の花茎とはまったく赤の他人のように3小葉をつけて伸びています。左の写真ではかろうじて仏炎包が見えますが、右は中央の緑色の茎が花茎です。3小葉の付根には珠芽をつけるようです

野蒜は勿論、烏柄杓も漢方では有用です

野蒜はユリ科、烏柄杓はサトイモ科と科は違いますが、人里の植物としての共通点があります。でも、野蒜は美味しい食べられる野草として人々に愛され花も愛でられますが、烏柄杓は畑の強害草として農家の人には嫌われ、姿形もあまり好感は持たれないようです。しかしながら漢方では球茎は「半夏」と呼ばれ咳止め、吐き気止めの薬用にされるようです。
平成19年7月14日作成